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何年もかけて取り組んできた研究を、数分で、専門外の人に伝える。理系の学生にとって、就活でいちばん難しいことの一つかもしれません。
私は航空宇宙工学の大学院で修士課程を修了し、自動車メーカーに就職しました。今はAI自動運転の開発をしながら、リクルーターとして学生の方と話す機会もあります。
ESの添削も担当していて、ありがたいことに、リクルーターの仲間内では「ESの添削がいちばんうまい」と言ってもらえています。
この記事では、ESや面接で研究をどう話せばよいかを、現役AIエンジニア兼リクルーターの視点で解説し、最終的にあなたがESにそのまま使える「書き方の型」を提示します。
- 課題への向き合い方:どんな問題意識でテーマに取り組み、どんな課題を見つけ、それをどう分析して、どう解決に結びつけたか。これを論理立てて話す
- 伝え方:やさしく、面白く話し(テクニカルな部分は削ってよい)、社会と、志望する会社につなげる
そして、「困難があった」より「課題を見つけた」と言うほうが、印象はぐっとよくなります。
- 研究の説明で、面接官が見ていること
- 技術の一点より大事な、課題の見つけ方と解き方
- 「困難があった」より「課題を見つけた」と言うべき理由
- 研究をうまく伝える3つのコツ
- 「会社でどう活かすか」へのつなげ方(私の当時のESの例つき)
- ESを見直すときの観点:研究の先の未来と、論理の飛躍
- ESの研究欄を書くための型と、書き比べの例
- 研究の成果が、まだ出ていないときの話し方
- 研究が、志望先の仕事と関係ないときのつなげ方(例つき)
- 準備の進め方:仮説を立てて、OB・OG訪問でぶつける
面接官は、研究の「深さ」を見ているわけではない
技術系の採用面接では、技術系の社員が面接官になることが多いです。とはいえ、面接官が学生の研究分野の専門家とは限りません。それに、学生の段階では、考えの中身で大きな差はつきにくいものです。
だからこそ見られているのは、研究そのものの深さより、それを相手に伝わる形で話せるか、そして会社でどう活かせるかまで考えているかです。
いちばん大事なのは、課題の見つけ方と解き方
リクルーターとしてESを添削していると、気づくことがあります。たかだか2〜3年の研究の、一つの技術そのものは、それほど重視されないということです。
もちろん、アピールできそうなところはアピールしておいたほうがいいです。ただ、それ以上に見られているのは、次のような流れを論理立てて話せるかです。
- どんなところを課題だと考えて、そのテーマに取り組んだのか
- 取り組む中で、どんな課題を見つけたのか
- その課題を、どう分析したのか
- 分析をもとに、どう解決に結びつけたのか

「困難があった」より「課題を見つけた」
研究の話をするとき、「こんな困難があった」と言う人は多いです。でも、「こんな課題を見つけた」と言い換えるだけで、印象はよくなると思います。
社会人にとって、課題を見つける力は、課題を解く力と同じくらい大切だからです。言われた問題を解くだけでなく、自分で問題を見つけられる人は、どの職場でも頼りにされます。
| 言い方 | 伝わる印象 |
|---|---|
| 「実験で困難があった」 | 苦労した話で終わってしまう |
| 「実験の中で、〇〇という課題を見つけた」 | 自分で問題を見つけ、向き合える人だと伝わる |
そのうえで、話を相手に届けるための伝え方のコツが、次の3つです。
コツ①:やさしく話す
研究室の中では当たり前の言葉も、一歩外に出れば、まるで異国の言葉のように響きます。研究の説明は、相手の頭の中に景色を描くつもりで話したいところです。
もう一つ、忘れがちなことがあります。面接官も人間で、全員があなたの研究に興味を持ってくれるわけではないということです。正直に言えば、私自身も、他人の研究のほとんどには、なかなか興味を持てません。
だからこそ、研究の説明は、相手の気をひけるように、やさしく、面白く伝えたいところです。そのためには、テクニカルな部分は、できるだけ削ってしまってかまいません。
削った部分は、捨てるわけではありません。相手がテクニカルな部分に興味を持ってくれたら、そのときに詳しく話せば大丈夫です。
- 専門用語を、身近な言葉に言い換えられているか
- 研究の目的を、一文で言えるか
- 研究を知らない家族や友人に話しても、伝わるか
- テクニカルな部分を削っても、話の筋が通るか
コツ②:社会とつなげる
次に、その研究が社会にどんな波紋を広げるのかを話します。何の役に立つのか、誰が喜ぶのか。そこが見えると、聞き手は研究の価値を一気につかみやすくなります。
コツ③:会社とつなげる(抽象度を少し上げる)
さらに、「その経験を、会社でどう活かせるのか」まで橋を架けられるとよいでしょう。コツは、少しだけ抽象度を上げることです。ただし、ありきたりな話で終わらせず、志望している会社だからこそ活きる形に結びつけたいところです。
| 段階 | 私の場合 |
|---|---|
| 研究 | 実験装置の中で、物体の位置をPID制御で保ち、その制御のパラメーターを同定する |
| 一段抽象化 | 目標に追従するフィードバック制御と、その調整の仕方 |
| 志望先ならではの形 | 前のクルマに追従して速度を変えるような、自動運転の制御に活かす |
自動車メーカーの現場には、まだ答えの出ていない課題がたくさんあります。研究で取り組んだことが、どの課題につながるのか。
そこまで語れれば、面接官の目の色はきっと変わります。現場の課題は、自動車メーカーが求める人材の記事にまとめています。
私の場合:研究と、当時のESのストーリー
私は修士課程で、宇宙機に関わる新しい技術について、実現できるかどうかを確かめる研究(フィジビリティスタディ)に取り組んでいました。
実験では、装置の中で物体の位置を一定に保ちながら、その動きを観測する必要がありました。このとき、物体の位置を保つために使っていたのが、PID制御というフィードバック制御です。

PID制御では、制御に使う定数(ゲインパラメーター)の決め方が重要になります。私は研究で、このパラメーターの同定にも取り組んでいました。

そこで当時のESでは、「研究で培ったPID制御のパラメーター同定の技術を、自動運転に役立てる」というストーリーにしました。コツ③の表が、そのつなげ方です。
今、リクルーターの立場から振り返ると
このストーリーも、悪くなかったと思っています。研究の技術と、志望先の仕事が、一本の線でつながっているからです。
ただ、リクルーターとしてESを添削する立場になった今は、少し見え方が違います。先に書いたとおり、研究の中の一つの技術は、それほど重視されません。
なぜこのテーマに取り組んだのか、どんな課題を見つけ、どう分析して、どう解決に結びつけたのか。その流れまで語れていれば、さらに強いESになっていたと思います。
ESを見直すなら:研究の先の未来は、すっと伝わるか
ESを添削していて、よく出会うつまずきが2つあります。
一つは、研究の先に、どんな未来が待っているのかがわかりにくいESです。研究の中身は丁寧に書かれていても、それが何につながるのかが見えないと、読み手は研究の価値をつかめません。
もう一つは、研究の内容と、「こんな未来につながる」という結論のあいだで、論理が飛躍しているESです。書いた本人の頭の中ではつながっていても、読み手には途中の段差が見えてしまい、話がスムーズにつながりません。
- 研究の先に、どんな未来が待っているのかが、はっきり書けているか
- 研究の内容から、その未来まで、論理が飛ばずにつながっているか
- 途中の一歩一歩を、初めて読む人でも追えるか
ESを書き上げたら、一度この観点で読み返してみてください。
ESの研究欄は、この型で書く
ここまでの話を、ESの研究欄に落とし込むための型にまとめておきます。上から順に書いていけば、課題の見つけ方と解き方、そして研究の先の未来まで、一本の線でつながります。
| 順番 | 書くこと | 200字なら | 400字なら |
|---|---|---|---|
| ① 背景 | なぜそのテーマに取り組んだのか。社会のどんな問題を解きたいのか | 30字 | 60字 |
| ② 見つけた課題 | 取り組む中で、どんな課題を見つけたのか | 40字 | 80字 |
| ③ 分析と解決 | 課題の原因をどう分析し、どう解決に結びつけたのか | 60字 | 140字 |
| ④ 研究の先の未来 | 研究がうまくいくと、何がよくなるのか | 30字 | 60字 |
| ⑤ 会社での活かし方 | その経験を、志望先でどう活かしたいのか | 40字 | 60字 |
いちばん字数を割きたいのは、③の分析と解決です。ここに、あなたの考え方がいちばんよく表れます。逆に、手法の細かい説明は、できるだけ削ってかまいません。
- 字数制限は使い切る:400字の制限なら、390字以上が目安
- 熟語で密度を上げる:限られた字数で多くの情報を伝えるには、漢字の割合が大切。ただし、専門用語は使わない
- 難しい話は一切出さない:ESを読む人は、大量の文章を読み込んでいる。少しでも難しい話は、一度目を通しただけでは処理しきれないおそれがある
字数と熟語の2つは、私が転職活動でエージェントから受けた指摘です。くわしくは転職エージェントの記事に書いています。
面接で話すときも、同じ順番で大丈夫です。1項目を10秒ほどで話せば、ちょうど1分くらいの説明になります。
書き比べてみる:よくある書き方と、伝わる書き方
型に沿うと、どれくらい印象が変わるのか。架空の研究テーマで、書き比べてみます。
研究としては、きちんと成果が出ています。でも、ESとしては惜しい点がいくつもあります。
- 専門用語が多い:研究を知らない人には、何をしたのかが伝わらない
- 「困難」で終わっている:どう分析して乗り越えたのかが見えず、苦労話になっている
- 研究の先の未来が見えない:何の役に立つのかも、会社でどう活かすのかも書かれていない
研究の中身は同じでも、①背景、②見つけた課題、③分析と解決、④研究の先の未来、⑤会社での活かし方が、順番につながっています。
専門用語は一つも使っていませんが、何をして、何がわかって、この先どうしたいのかが、すっと伝わるはずです。
研究の成果が、まだ出ていないときは
ESを書く時期には、研究が始まったばかりで、まだ成果が出ていない人も多いと思います。それでも、話し方はあります。研究の全体像を見せたうえで、今どこまで進んでいて、この先に何が待っているのかを伝えれば大丈夫です。
- まず、研究の全体像(課題の全体)を見せる
- 「ここと、ここの確認は済んだ。残りは、ここを確かめる予定だ」と、今の位置を示す
- 「仮にここがわかれば、こういう結論が出せて、社会にはこういうインパクトを残せる」と、その先を語る

これは、社会でもよくある進め方です。まず課題の全体を見渡し、仮説を立てて、宝のありそうなところから要素を検証し、一つずつ潰していきます。そして、最後にここの分析が終われば、課題に対する結論が見えます。
こうした言い方ができれば、成果がまだなくても、課題への向き合い方そのものが伝わります。先ほどの架空の研究で書くと、たとえば次のようになります。
研究が、志望先の仕事と関係ないときは
私の場合は、PID制御という研究の技術が、たまたま自動運転の制御につながっていました。でも、研究の中身と志望先の仕事が、まったく関係ないという人も多いはずです。
そんなときも、コツ③と同じく、抽象度を一段上げれば大丈夫です。つなげるのは研究の技術ではなく、研究の中で身につけた、課題の見つけ方と解き方のほうです。先に書いたとおり、面接官が見ているのも、もともとそこです。
自動車メーカーを志望する場合を例に、架空の研究で考えてみます。
| 研究(架空の例) | 一段抽象化 | 自動車メーカーで活きる形 |
|---|---|---|
| 生物系 微生物がよく育つ培養の条件を探す | 条件の組み合わせが多い中で、仮説を立てて効率よく絞り込む | 気温、天候、路面など、条件の組み合わせが膨大なクルマの評価試験を、効率よく計画する |
| 数学系 新しい定理を証明する | 前提から一歩ずつ論理を積み上げ、抜け漏れなく説明する | 「なぜこのクルマは安全だと言えるのか」を、抜け漏れなく説明する |
| 土木系 古い橋のひび割れの進み方を調べる | 目に見えにくい劣化を、データから早めに見つける | クルマの部品の不具合を、走行データから早めに見つける |
どの例も、研究の技術そのものは、クルマとは関係がありません。それでも、一段抽象化した「課題の解き方」は、志望先の課題とつながります。
そのために大事なのは、志望先の現場にどんな課題があるのかを、先に知っておくことです。後で書くOB・OG訪問は、そのためにも役に立ちます。
👉 就活の面接で差がつく話し方と逆質問|リクルーターが見ているポイント
準備の進め方:仮説を立てて、OB・OG訪問でぶつける
「研究を会社でどう活かせるか」は、机の上だけで考えても、なかなか確かめられません。おすすめは、自分で仮説を立てる → AIでブラッシュアップする → 現場の社員に質問するという流れです。
仮説が合っていても間違っていても、その場で確かめられるうえ、「よく考えている」と伝わります。
現場の社員に話を聞くなら、同じ大学の先輩がいちばん頼りになります。研究室や知り合いのつながりがなくても、母校の先輩にOB・OG訪問を申し込めるサービスもあります。
▶ 同じ大学出身の先輩に話を聞けるOB/OG訪問ネットワーク「ビズリーチ・キャンパス」
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まとめ
- 2〜3年の研究の、一つの技術そのものは、それほど重視されない
- 大事なのは、どんな課題意識でテーマに取り組み、どんな課題を見つけ、どう分析し、どう解決に結びつけたかを、論理立てて話すこと
- 「困難があった」より「課題を見つけた」。課題を見つける力は、解く力と同じくらい大切
- 伝え方のコツ:やさしく話す/社会とつなげる/抽象度を少し上げて、志望先ならではの形で会社につなげる
- 面接官全員が研究に興味を持つわけではない。テクニカルな部分は削り、興味を持たれたら話す
- ESは、研究の先の未来がはっきりしているか、論理が飛躍していないかで見直す
- 研究欄は「背景→見つけた課題→分析と解決→研究の先の未来→会社での活かし方」の型で書く
- 成果がまだなければ、全体像を見せ、確認済みのところと残りを示し、その先の結論とインパクトを語る
- 研究が志望先と関係なくても、一段抽象化した「課題の解き方」でつなげる
- 準備は、仮説を立ててOB・OG訪問でぶつける
何年もかけた研究は、それだけで立派な財産です。あとは、それを相手に届く言葉に置き換えるだけ。その一手間が、面接の手応えを大きく変えます。
👉 自動車メーカーのAIエンジニアが年収を上げるキャリア戦略


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