理系は大学院に行くべき?修士卒エンジニアが「行って正解だった」と思う理由と奨学金の話

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理系の学部生にとって、大学院に進むかどうかは、大きな分かれ道です。就職するか、あと2年研究を続けるか。

私は航空宇宙工学の修士課程を修了し、自動車メーカーに就職しました。今はAI自動運転の開発をしながら、リクルーターとして学生と話す機会もあります。この記事では、理系は大学院に行くべきかを、修士卒の現役AIエンジニアの視点で解説し、最終的にあなたが進学を判断するための目安を提示します。

先に結論
私は、大学院に行って正解だったと考えています。
  • 楽しかった:時間があるからこそ、遊びにも、研究にも、ちょっとした事業(ブログ、株、せどり)にも、気が済むまで取り組めた
  • 仕事と就活に効いた:研究で身につけた課題の見つけ方と解き方は、就活でも今の仕事でも使っている
  • お金はなんとかなる:生活費はバイトや事業で賄い、奨学金は満額借りておくのがおすすめ。研究を真面目にやれば、返還免除の可能性も十分にある
  • ただし、お金だけで見ると:入社してみると、院卒だから出世が早いわけではなかった。生涯年収は、学部卒のほうが高くなるかもしれない

いちばんの理由は、楽しかったこと

大学院に行って正解だったと思う、いちばんの理由。それは、シンプルに楽しかったことです。

研究室の友人や大学の友人とは、気が済むまで遊びました。研究にも打ち込みました。そして、ちょっとした事業にも挑戦しました。

時間があるからこそ、取り組めることがあります。学部の4年間は、授業や卒業研究に追われて、意外と時間がありません。特に20歳以下では、まだ若すぎて、できる事業も限られます。

大学院の2年間は、少し大人になった自分で、まとまった時間を使えます。その時間で何をするかは、自分しだいです。

ブログ、株、せどり。お金を生む仕組みを試した

私が学生時代に取り組んだ「ちょっとした事業」は、ブログ、株、せどりなどです。

どうしたらお金が入ってくるのかを考え、行動に移します。うまくいかなければ、改善してまた試します。結果がどうであれ、このプロセスそのものが勉強になりますし、何より楽しいのです。

考えてみると、これは研究とよく似ています。仮説を立てて、試して、結果を見て、直す。研究室で回していたのと同じサイクルを、お金という、わかりやすい結果で回していました。

だから、学生のうちに何かに挑戦してみるのは、本当におすすめです。今はAIが出てきて、副業もかなり始めやすくなっています。学生の時間を大切に、いろいろなことに挑戦してみてください。それは、きっといい経験になります。

大学院で得たもの

楽しかっただけではありません。振り返ると、大学院の2年間で得たものは、研究の知識そのものより、もう少し広いものでした。

いちばん大きいのは、論理的に考える力

いちばん身についたと思うのは、論理的に考える力です。

大学院の頃は時間があったので、いろいろな本も読みましたし、研究にもじっくり向き合いました。本を読んでも、研究をしても、そこには必ず論理の組み立てがあります。毎日それに触れているうちに、自然と論理的に考える癖がつきました。

教授と話す機会が増えたことも大きいです。自分の考えを説明し、意見をもらいます。そのやり取りの中で、話の筋道が通っているかを、いつも気にするようになりました。

教授とは、もっと対等に話せばよかった

一つ、今になって思う後悔があります。

当時、学生と教授の立場は対等ではありませんでした。教授に意見を「もらいに行く」、教授の言うことが絶対であるかのように振る舞う。そんな学生が多かったですし、私もその一人でした。

でも、今思うと、それはかなりもったいなかったのです。教授と、本当の意味でディスカッションする機会を逃していたからです。

学生のうちから、大人と対等に話す癖をつけておくと、就活ではかなり有利に働きます。そして何より、物おじしない度量がつきます。面接での態度については、面接の話し方の記事にも書いています。

ほかにも得たもの

大学院で得たもの
  • 課題の見つけ方と解き方:どんな課題を見つけ、どう分析して、どう解決に結びつけるか。この流れは、今の仕事でもそのまま使っている
  • 仕事につながる専門知識:航空宇宙工学で学んだ制御工学の延長線上に、自動運転の技術があった
  • 外の人と一緒に進める経験:在学中には、JAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同研究にも携わった

特に一つ目の「課題の見つけ方と解き方」は、ESや面接でも、いちばん見られているところです。詳しくは研究の話し方の記事に書いています。

就活で感じた、修士であることの違い

就活でも、修士であることの違いを感じる場面がありました。

就活で感じたこと
  • 研究という話の材料がある:ESや面接で、研究の課題と解き方を、具体的に話せる
  • 推薦という選択肢もある:理系の大学院では、学校推薦を使う人も多い。私は受けた会社で差をあまり感じなかったので、自由応募で進めた
  • 就活は、入学してすぐ始まる:私の場合は、修士1年の夏のインターンから早期選考に進み、修士1年の冬には内定をいただいた

三つ目は、意外と見落とされやすいです。修士の2年間のうち、就活と研究は、ほぼ同時に進むことになります。私の就活の流れは、新卒の就活の記事に書いています。

リクルーターとして学生と話していても、傾向として、院卒の学生のほうが論理性を感じます。研究や教授とのやり取りで、筋道を立てて話す機会が多いからだと思います。

また、これは私の感覚ですが、学部卒で大手企業に入るよりも、院卒で大手企業に入るほうが、簡単な気がします。

就活では、研究室のOB・OGに話を聞いたことも、とても役に立ちました。大学院に進むか迷っている段階でも、研究室の外の先輩に話を聞いてみると、院卒で働くとはどういうことかが具体的に見えてくると思います。

研究室や知り合いのつながりがなくても、同じ大学の先輩にOB・OG訪問を申し込めるサービスもあります。

▶ 同じ大学出身の先輩に話を聞けるOB/OG訪問ネットワーク「ビズリーチ・キャンパス」

お金はどうする?生活費と奨学金

大学院に進むか迷う理由として、いちばん大きいのはお金かもしれません。私の場合は、次のようにしていました。

私の場合
生活費事業やバイトで稼いだお金で賄った
奨学金最大限に借りた(当時は月8万円ほどだったと記憶している)
返還研究に真面目に取り組み、半額の返還免除を受けられた
大学院時代のお金(私の場合)

日本学生支援機構(JASSO)の無利子の奨学金(第一種)には、大学院で特に優れた業績を挙げた人の返還を、全額または半額免除する制度があります。研究の成果だけでなく、社会貢献などの活動も評価の対象になります。

研究を真面目にやっていれば、免除にかかる可能性は十分にあります。現に私も、半額免除となりました。

だから私は、奨学金は満額借りておくのをおすすめします。手元に余裕があれば、研究にも、それ以外の挑戦にも、思い切って時間を使えます。

奨学金を借りる前に
  • 金額や免除の条件は、年度によって変わることがある。最新の情報は、JASSOと進学先の大学の案内で確認しておきたい
  • 修士課程に入学するときに、返還免除が内定する制度も始まっている(条件あり)
  • 奨学金は、免除されなかった分は返していくお金だ。返し方の見通しは、借りる前に立てておくと安心

お金だけで見ると、学部卒のほうが有利かもしれない

一方で、正直に書いておきたいこともあります。

学生の頃の私は、大学院卒のほうが、生涯年収は高くなるのだと思っていました。でも、会社に入ってみると、あまり変わりません。

院卒だから出世が早い、というわけでもありません。むしろ、入社年次でだいたい同じくらいのステップで昇進していきます。だから、若い年齢で入社した学部卒のほうが、年齢で見ると高い職位につきやすい傾向にあるような気もします。

そもそも院卒は、学費を払って2年間を学問に費やします。その2年間、学部卒は給料をもらっています。そう考えると、生涯年収は、学部卒のほうが高くなるのではないかと思っています。

院卒学部卒
入社するとき2年遅く入社する2年早く入社する
院の2年間学費を払って研究に費やす給料をもらって働く
昇進入社年次で、だいたい同じステップで進む同左。年齢で見ると、高い職位につきやすい傾向も
大手企業への入りやすさ入りやすい気がする院卒より難しい気がする
院卒と学部卒の違い(私が入社してみて感じていること)

それでも私は、大学院に行って正解だったと思っています。楽しかった2年間と、そこで身についた考える力は、お金では測れないものだったからです。

迷っている人へ:判断の目安

最後に、迷っている人が考えておくとよいことを挙げておきます。

判断の目安
  • 研究してみたいテーマや、深めたい分野があるか
  • 志望する仕事は、研究や開発など、専門性が活きる職種か
  • 大学院の2年間を、研究以外も含めて、何に使いたいか
  • 生活費と学費の見通しは立つか(バイト、奨学金、免除の制度も含めて)
  • お金だけで考えるなら、学部卒で早く働き始めるのも合理的な選択だと知っておく

大学院の2年間は、研究だけの時間ではありません。時間があるからこそ、遊びも、研究も、新しい挑戦も、気が済むまでできます。迷っているなら、その2年で何をしたいかを、一度思い描いてみてください。

まとめ

この記事のポイント
  • 私は、大学院に行って正解だったと考えている
  • いちばんの理由は、楽しかったこと。時間があるからこそ、遊びにも研究にも事業にも取り組めた
  • お金を生む仕組みを考え、試し、改善するプロセスは、勉強になるし楽しい。AIで副業も始めやすくなった今、学生の時間でいろいろ挑戦してほしい
  • 学部の4年間は意外と時間がなく、20歳以下では若すぎてできる事業も限られる
  • 大学院でいちばん身についたのは、論理的に考える力。教授とは、もっと対等に議論すればよかった
  • リクルーターの目線では、院卒の学生のほうが論理性を感じる。院卒のほうが大手企業にも入りやすい気がする
  • 大学院で得たのは、課題の見つけ方と解き方。就活でも仕事でも使っている
  • 生活費はバイトや事業で賄い、奨学金は満額借りるのがおすすめ。研究を真面目にやれば、返還免除の可能性も十分にある
  • ただし、院卒だから出世が早いわけではない。生涯年収は、学部卒のほうが高くなるかもしれない

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