自動運転レベル4は「別物」だった|開発現場から見たレベル0〜5の本当の境目

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「自動運転のクルマ」と聞いて、どんな姿を思い浮かべるでしょうか。

ハンドルから手を離して、本を読みながら目的地に着くクルマ。でも、今お店で買えるクルマの「自動運転」の多くは、そこまでのものではありません。そのずれを整理するために使われているのが、自動運転の「レベル」という物差しです。

私は自動車メーカーで、AIを使った自動運転の先行開発をしています。この記事では、自動運転のレベル0〜5の本当の境目を、AI自動運転の開発に携わる現役エンジニアの視点で解説し、最終的にあなたがニュースの「自動運転」を正しく読み解くための物差しを提示します。

先に結論
  • レベル0〜2:運転の主役は人間。システムは手伝うだけで、事故の責任も運転する人にある
  • レベル3:決められた条件の中では、システムが運転の主役になる。ただし、求められたら人がすぐに運転を代わる
  • レベル4:決められた条件の中なら、人が運転を代わらなくてよい
  • レベル5:どんな場所・どんな条件でも、システムがすべて運転する。まだ実現していない
  • 現場の目線:同じレベル2でも中身には大きな差があり、責任の考え方でレベルの表示が変わることもある。レベル4は、何重ものフェールセーフが必要な別物で、コストの面からロボタクシーと相性が良い

この記事で書いていること
  • 自動運転のレベル0〜5の違い
  • レベルを分ける境目は「誰が運転の主役か」
  • 「決められた条件(ODD)」とは何か
  • 日本のレベル3・レベル4の今と、アメリカのWaymo
  • 開発の現場から見た、レベルの数字だけではわからないこと(同じ技術でもレベルの表示が変わる理由、レベル4が別物である理由)

自動運転のレベルとは

自動運転のレベルは、アメリカの自動車技術会(SAE)が定めた基準をもとにしています。日本の国の資料でも、この考え方が使われています。

レベルは0から5までの6段階です。数字が大きいほど、クルマに任せられる範囲が広くなります。

自動運転のレベル0から5を階段で示した図。レベル0から2は人が運転の主役で、レベル3から5はシステムが運転の主役。レベル3は求められたら人が代わる、レベル4は条件の中なら代わらなくてよい、レベル5はどこでも
自動運転のレベル0〜5
レベルクルマがすること運転の主役身近な例
0運転の操作はしない(警告などはする)人ぶつかりそうなときの警告
1ハンドル操作か、アクセル・ブレーキのどちらか一方を手伝う人前のクルマについていく機能(ACC)、車線からはみ出しにくくする機能
2ハンドル操作と、アクセル・ブレーキの両方を手伝う人高速道路で、車線の中を前のクルマについて走る機能
3決められた条件の中で、運転をすべて担う。求められたら人が代わるシステム(条件の中)高速道路の渋滞中だけ、システムが運転する機能
4決められた条件の中で、運転をすべて担う。人が代わる必要はないシステム(条件の中)決まったルートを走る、運転手のいない移動サービス
5どんな場所・条件でも、運転をすべて担うシステムまだ実現していない
自動運転のレベル(わかりやすく言い換えたもの)

いちばん大きな境目は、レベル2と3のあいだ

6つのレベルの中で、いちばん大きな違いがあるのは、レベル2と3のあいだです。ここで、運転の主役が人からシステムに入れ替わります。

レベル2までレベル3から
運転の主役人システム(決められた条件の中)
運転する人がすること常に前を見て、いつでも運転できる状態でいる条件の中なら、運転以外のことをしてもよい場面がある。ただし、求められたらすぐに代わる
名前のイメージ「運転支援」「自動運転」

今、多くのクルマに付いている機能は、レベル2までの「運転支援」です。ハンドルから手を離せる機能を持つクルマもありますが、それでも運転の主役は人で、前を見ておく必要があります。「手を離せる」と「運転を任せられる」は、別のことです。

「決められた条件」=ODDとは

レベル3と4の説明に出てくる「決められた条件」は、専門用語でODD(運行設計領域)と呼ばれます。そのシステムが安全に運転できる範囲のことです。

ODDの例
  • 場所:高速道路だけ、決まったルートだけ
  • 速さ:時速○km以下のときだけ
  • 天気・時間:雨や雪のとき、夜は使えない
  • 状況:渋滞しているときだけ

レベル3や4のクルマも、どこでも走れるわけではありません。ODDの外に出そうになったら、レベル3なら人に運転を返し、レベル4ならクルマ自身が安全に止まります。レベル4と5の違いは、このODDに制限があるかどうかです。

日本の今:レベル3とレベル4は、もう始まっている

時期出来事
2020年法律が改正され、レベル3のクルマが公道を走れるようになる
2021年3月ホンダが、レベル3の機能を持つ「レジェンド」を発売。高速道路の渋滞中に、システムが運転を担う。市販車としては世界初
2023年4月改正道路交通法が施行。レベル4を「特定自動運行」と定め、公安委員会の許可を受ければ、運転者がいない運行ができるようになる
2023年5月福井県永平寺町の移動サービスが、国内で初めて特定自動運行の許可を受ける。決まった約2kmの区間を、時速12kmで走る
日本の自動運転の主な出来事

ただし、どれもODDがかなり絞られています。レベル3は高速道路の渋滞中だけ、レベル4は決まったルートを低い速度で走るだけ、といった具合です。ニュースで「完全自動運転」と書かれることもありますが、条件付きであることは変わりません。

レベル4の先頭を走る、アメリカのWaymo

アメリカでは、レベル4のクルマがすでに街を走っています。グーグルの親会社であるAlphabet傘下のWaymo(ウェイモ)は、運転手のいないロボタクシーを、アメリカの複数の都市で一般向けに走らせています。

ロサンゼルスの街角に停まるWaymoのロボタクシー。白い車体の屋根の上に大きなセンサーがあり、車体の前方にもカメラやセンサーが付いている
ロサンゼルスで撮影したWaymoのロボタクシー。屋根の上や車体の前方に、たくさんのセンサーが付いている

2026年時点の報道によれば、フェニックス、サンフランシスコ、ロサンゼルスなどで運行されていて、有料の乗車は週に50万回を超えたとされています。

写真のとおり、屋根の上には大きなセンサーがあり、車体のあちこちにもカメラやセンサーが付いています。

屋根の上の大きなセンサーには、LiDARも組み込まれています。人に運転を代わってもらえないレベル4では、ここまでの装備と、何重もの安全の仕組みが必要になります。

Waymoがロボタクシーという形で広がっているのも、こうしたコストの事情と重なります。今のところ、決まったルートを比較的低い速度で走るものが中心の日本のレベル4と比べると、走る範囲の広さには大きな差があります。

開発の現場から:レベルの数字だけではわからないこと

同じレベル2でも、中身には大きな差がある

レベル2とひと口に言っても、できることには大きな差があります。中には、レベル3に相当する技術を持ちながら、あえてレベル2として売り出すという戦略もあります。

理由は、責任の所在です。レベル3になると、決められた条件の中ではシステムが運転の主役になります。

事故が起きたとき、メーカーの責任が問われやすくなり、世の中の風当たりも強くなります。だから同じ技術でも、あえて「運転支援」のレベル2として出すことがあります。

逆に、責任や規制の考え方が違う国では、同じ技術をレベル3相当として売り出すこともあります。

ニュースでレベルを見るときは
レベルの数字は、技術の高さだけで決まるわけではありません。責任の考え方や、国ごとの事情によっても変わります。「レベル2だから大したことはない」とは限りません。

レベル2〜3と、レベル4は別物

レベル2とレベル4は、同じ自動運転(AD)でも、性質がまったく違います。レベル2は市販のクルマにすでに広く載っていて、レベル3も、これから市販のクルマで少しずつ広がっていくでしょう。でも、レベル4はそうはいきません。

レベル4では、システムが責任を持って運転をやり遂げなければなりません。つまり、どんな外乱があっても、人に運転を代わってもらわずに走り続ける必要があります。そのためには、何重ものフェールセーフ設計を組まなければなりません。

何重ものフェールセーフは、センサーやコンピューターを二重、三重に持つ冗長なシステム構成につながります。そのぶん、1台あたりのコストは大きくなります。

加えて、レベル4のロボタクシーの多くは、カメラやレーダーに加えて、レーザーで周りとの距離を細かく測るLiDAR(ライダー)を積んでいます。

LiDARはカメラに比べてかなり高価なセンサーで、これもコストを押し上げます。だからレベル4は、個人が1台ずつ買うクルマよりも、ロボタクシーのように事業者がクルマを持ち、たくさんの人を乗せて稼働させる使い方と相性が良いのです。

レベル2〜3レベル4
困ったとき人に運転を任せる(レベル3は人に代わってもらう)人に代われない。システムだけで切り抜ける
必要な設計人に戻すまでの安全を確保するどんな外乱でも走り続けられるよう、何重ものフェールセーフを組む
コスト比較的おさえやすい冗長なシステム構成と、高価なLiDARなどで高くなる
広がり方市販のクルマで、すぐに広がっていくロボタクシーなど、事業者が運行する形が中心

AIの外側で「止める線」を引くフェールセーフの考え方は、End-to-EndのAI自動運転の記事に詳しく書いています。

もっと知りたい人へ

自動運転を含め、クルマとソフトウェアの関係がこれからどう変わるのかを知るなら、この本がわかりやすいです。

まとめ

この記事のポイント
  • レベル0〜2:運転支援。運転の主役は人
  • レベル3:条件の中ではシステムが主役。ただし、求められたら人が代わる
  • レベル4:条件の中なら、人が代わらなくてよい
  • レベル5:条件なし。まだ実現していない
  • 日本の今:2021年にレベル3の市販車、2023年にレベル4の移動サービスが始まった。ただし、どちらも条件はかなり絞られている
  • Waymo:アメリカの複数の都市で、運転手のいないロボタクシーが走っている
  • 現場の目線:レベルの数字は、責任の考え方や国の事情でも変わる。レベル4は、どんな外乱でも人に代わらず走り続けるための、何重ものフェールセーフが要る

自動運転は、ある日突然「完成」するものではありません。条件を少しずつ広げながら、一段ずつ階段を上っていく技術です。ニュースで「自動運転」という言葉を見かけたら、それがどのレベルで、どんな条件の話なのかを、ぜひ確かめてみてください。

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