自動車メーカーが求める人材とは?情報・電気電子・機械の強みと、面接官が面接で見ているポイント

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技術の知識なら、今はAIに聞けばいくらでも出てきます。それでも面接で、人は人を見ています。

私は自動車メーカーで、AIを使った自動運転の先行開発をしています。そのかたわら、リクルーターとして学生の方と話す機会もあります。

では、その面接で何が見られているのか。開発の現場とリクルーターの両方の目線から、今の自動車メーカーがどんな人材を求めているのかを書いていきます。

この記事では、自動車メーカーが今どんな人材を求めているのかを、現役AIエンジニア兼リクルーターの視点で解説し、最終的にあなたが面接でアピールすべきポイントを提示します。

先に結論
  • 採用の流れ:今はとにかく情報系が強い。ADASやコネクテッドの採用が増え、電気電子系と機械系も強い
  • 面接の仕組み:技術系の面接は、技術系の社員が見る。そのポイントを押さえれば、面接を通る可能性はぐっと上がる
  • 準備:まずは会社を知ること。仮説を立てて、インターンや座談会、OB訪問でぶつける
  • 求める人物像:技術力よりも、自信と落ち着き、論理的に考える力、そして関係者を巻き込んで物事を前に進める力

この記事で書いていること
  • 自動車業界の採用は、今どう動いているか
  • 技術系の採用面接は、誰が見ているのか
  • 情報系・電気電子系・機械系、それぞれの強み
  • AIの波の中で、どうアピールするとよいか
  • 現場が抱えている課題
  • 会社を知るための、仮説の立て方とぶつけ方
  • リクルーターとして見ていること
  • 技術力より大切な、求める人物像

なお、ここに書くのは会社の見解ではなく、一人のエンジニアとしての私の考えです。

自動車業界の採用は、今どう動いているか

クルマは今、CASE(ケース)と呼ばれる4つの波の中にあります。

頭文字意味クルマで起きること
CConnected(つながる)クルマがネットにつながり、データのやり取りやソフトの更新ができる
AAutonomous(自動運転)運転支援や自動運転で、クルマが自分で走る
SShared & Services(シェアとサービス)クルマを「持つ」から「使う」へ。移動をサービスとして提供する
EElectric(電動化)エンジンからモーターと電池へ

この波を受けて、採用で増えているのがADAS(運転支援)とコネクテッドです。中でも今は、とにかく情報系が強いです。情報系の採用を広げようとする流れがあり、自動運転に関する採用も間口を広げています。

技術系の採用面接は、技術系の社員が見る

次に知っておいてほしいのが、面接の仕組みです。技術系の採用面接なら、面接官は基本的に技術系の社員が務めます。

最終的な権限は、人事にあります。ただ、私の職場の感覚では、技術の側が「この人が欲しい」と言った人材に人事が反対することは、よほどのことがない限りありません。

つまり
技術系の面接官のポイントを押さえたアピールができれば、面接を通る可能性はぐっと上がります。ここから先は、そのポイントの話をしていきます。

専攻別:自動車メーカーで強みになること

では、技術系にはどんな専攻の人が入ってくるのか。私が見ている範囲では、技術系に入ってくる人の8割は、情報系・電気電子系・機械系の3つの専攻の出身です。

ただし、この3つ以外だから無理だというわけではありません。8割という数字には、これらの工学を学んだ人が、そもそも自動車メーカーを選びやすいという実情も表れているのでしょう。残りの2割は、ほかの専攻から入ってくる人たちです。

専攻強い理由
情報系今いちばん強い。採用を広げようとする流れがある
電気電子系ADASやコネクテッドの採用が増え、電気電子の知識も当然問われる
機械系クルマはメカの上で動く。機械を知っている前提で、話が進む

情報系:今いちばん求められている

クルマの価値は、ソフトウェアとAIへ移りつつあります。情報系の採用を広げようとする流れは、その表れです。ただし、アピールの仕方には少しコツがあります(後で書きます)。

電気電子系:不安定な電源の上で、安定した機能を

お客様が期待するのは、安定した機能を、いつでも使えることです。ところがクルマは、限られた、しかも不安定な電源の上で動いています。その上で機能を安定させるのは、意外と難しいのです。

そこで生きるのが、電気電子の知識です。ADASやコネクテッドの採用が増えている今、当然のように問われます。

機械系:クルマづくりの土台

そもそもクルマの機能は、メカの上で動いています。社内にも機械出身の人が多く、機械のことを知っている前提で話が進んでいきます。

航空宇宙工学のように、学ぶ中身が機械系とほとんど同じ分野も、ここに含めてかまいません。私自身も、航空宇宙工学の出身です。

ソフトウェアや電装をやりたい人にとっても、機械の知識は欠かせません。車両に実装する以上、メカの制約は必ずついてくるからです。ハードウェアのメンバーと話しながら実装を進めるうえでも、共通の言葉になります。

AIの波の中で:「作りたい」より「使ってできる」

自動車業界は、AIの波を真正面から受けている業界です。そして、自社の中だけでAIを内製していても、なかなか勝てません。AIベンダーとの協調が欠かせないのです。

だから面接では、「AIを作りたいです」という売り出し方よりも、「AIを使って、こういうことができます」というアピールの方がいいと思います。

売り出し方伝わり方
「AIを作りたいです」AIそのものは、AIベンダーと組んで作ることも多い
「AIを使って、こういうことができます」AIを、クルマの課題を解く道具として使える人だと伝わる
AIのアピールの仕方(私の考え)

現場が抱えている課題に、切り込めるか

今の現場には、まだ答えの出ていない課題がいくつもあります。

課題中身
AIの評価の基準AIを使ったときの評価のクライテリア(判断の基準)が、まだ決まっていない
ソフト中心の開発プロセスソフトが主流になったときの、確立された開発プロセスが決まっていない。実車ができてから、ようやく最後にADASの評価ができる流れになっている
OTAの普及ソフトを無線で更新するOTAの普及が、いまひとつ進んでいない
ソフトの管理技術的にできたとしても、毎日のように更新されるソフトを、今のレガシーな管理方法では管理しきれない
今の現場の課題

これらの課題に、自分の経験を持って切り込んでいけるとアピールできると強いです。研究やインターン、個人の開発で取り組んだことが、どの課題につながるのか。そこまで語れれば、面接官の目の色はきっと変わります。

AIの評価の基準が難しい理由は、End-to-EndのAI自動運転の記事にも書いています。

自動運転の現場の課題を、手元で知りたい人へ
このブログで紹介しているAI自動運転ミニカーは、実際の現場でどんな課題があるのかを学べる縮図になっています。AIを動かす頭脳と、モーターを動かす制御を分けた、実車に近い構成です。通信の遅れや、AIが間違えたときに止める仕組みといった、AIをクルマに載せるときにぶつかる課題に、小さなスケールで向き合えます。
👉 Python×ArduinoでEnd-to-End自動運転ミニカーを作る
👉 AI自動運転ミニカーの部品リスト(約1万円でそろう)

すべての出発点は、会社を知ること

専攻の強みも、AIのアピールも、現場の課題も。そのすべての出発点になるのが、会社というものを知ることだと思います。

会社を知らなければ、自分の強みがどう会社に貢献できるのかを、面接で話すことはできません。地図を持たずに、目的地までの道順は語れないのと同じです。

仮説を立てて、現場にぶつける

おすすめしたいのは、「自分のスキルは、こう役立てられるはずだ」という仮説を立てておき、それをインターンシップや座談会、OB訪問でぶつけるやり方です。

  • 現場レベルのリアルな課題感と合っているかを、その場で確かめられる
  • 仮説が合っていても、間違っていても、質問された側には「鋭い考察をしている」という印象を与えられる

質問のイメージ(例)
「研究で、毎日更新されるデータの管理を工夫してきました。ソフトが毎日のように更新されるようになると、今の管理方法では追いつかないのではと考えたのですが、現場ではどう感じていますか?」
※わかりやすくするための例です。自分の経験に置き換えて考えてみてください。

仮説づくりに、AIを使ってもいい

仮説を立てるときには、AIを使ってもいいと思います。とはいえ、仮説思考のプロセスは、社会人になってからも大切な考え方です。最初からAIに任せきりにするのは、もったいないです。

会社を知るための仮説の流れ。1 自分で仮説を立てる、2 AIでブラッシュアップする、3 インターン・座談会・OB訪問で現場の方に質問する。合っていても間違っていても、その場で確かめられ、鋭い考察をしていると伝わる
自分で考える → AIで磨く → 現場で確かめる

自分で仮説を立てる → AIでブラッシュアップする → 現場の方に質問する。この順番を踏むのがいいと考えています。

仮説を持って現場の方に話を聞くには、OB・OG訪問がいちばんの近道です。同じ大学の先輩なら、説明会では聞けない本音も聞きやすいものです。

▶ 同じ大学出身の先輩に話を聞けるOB/OG訪問ネットワーク「ビズリーチ・キャンパス」

企業から直接スカウトが届く、スカウト型の就活サービスもあります。キミスカは、プロフィールを登録しておくと、あなたに興味を持った企業からスカウトが届くサービスです。自分では見つけられなかった企業と出会うきっかけになります。

※私の就活のころは使っていなかったサービスですが、就活生向けの選択肢として紹介しています。

▶ 企業からスカウトが届く就活サービス「キミスカ」

リクルーターとして見ていること

まず、自信があって落ち着いているか

リクルーターの立場から言うと、とにかく自信があって、落ち着いている人が魅力的に映ります。

学生の段階では、考えの中身で大きな差はつきにくいです。だからこそ差がつくのは、中身より先に話す姿勢になります。

その上で、仮説・結論・まっすぐさ

自信と落ち着きの次に見ている3つ
  • きちんと仮説を立てて話ができているか
  • 結論から話しているか
  • 質問に対して、遠回しな言い回しになっていないか

話し方は、本番ではなく普段から

ただ、「結論から話す」といった話し方は、面接の本番で意識するものではないと思います。普段のコミュニケーションの中で、少しずつ身につけていくものです。

面接の本番は、どこまでいっても人と人とのコミュニケーションです。話し方の細かいところばかりに目が向いていては、うまくいきません。

面接で、これに勝るアドバンテージはない
自信を持って、落ち着いて、大きな声で話ができること。そのためには、身近な大人と、なるべく等身大で会話することを、日ごろから意識してみるといいと思います。

求める人物像:技術力より、コミュニケーションと論理

私が大事だと考えているのは、技術力よりもコミュニケーション力と論理的思考力です。

論理的思考力とは
平たく言うと、ありたい姿から逆算して、今どうすればいいかを、論理の飛躍なく考えられる力のこと。

技術は、AIに聞けば出てくる時代

技術の知識は、AIの普及で、もはやAIに聞けばいくらでも出てきます。ところが、車両に実装しようとなったとき、AIにはやってもらえない仕事があります。

たとえば、こんな場面です。

  1. ADASから「こういう指令値を出すから、受け取ったらこういう制御を入れてくれ」と頼む
  2. ところが、その制御を入れると、別のある機能が使えなくなる
  3. そこで、機能どうしの仕様の整合が必要になる

こうした調整は、AIには任せにくいのです。社内に依存する要素が、あまりに多いからです。自社のどの機能が、どんな仕様で動いていて、それを誰が担っているのか。

すべてをAIに伝えようとすると、インプットするパラメーターが膨大になってしまいます。

AIに任せにくい仕事の特徴
社内に依存する要素が多い仕事ほど、AIには任せにくいものです。一般的な技術の知識なら、AIが答えてくれます。でも、自社のクルマの仕様や、社内の誰が何を担っているかといった情報は、AIの外にあります。

重宝されるのは、ポータブルスキルを持つ人

だからこそ重宝されるのが、どこへ行っても通用するゼネラルなポータブルスキルを持っている人です。

重宝されるポータブルスキルの流れ。1 関係者を漏れなく集める、2 課題を簡潔に共有する、3 考慮の抜け漏れがないよう論点を明確にする、4 いつまでに誰が何をするかを決める。2から4を30分の会議の中で行う
現場で重宝される、ポータブルスキル

まず、即座に関係者を漏れなく集めます。そして30分の会議の中で、課題を簡潔に共有し、考慮の抜け漏れがないように論点を明確にして、いつまでに、誰が、何をするかまで取り決めます。

課題を説明して終わりではありません。役割を決めきるところまでを、30分でやりきります。社内に依存する調整だからこそAIには任せにくい、人と人のあいだをつなぐ力です。

仮説を立てて考える力や、論理的に話す力を、私はビジネス書から多く学びました。読んできた中から選んだ本は、ビジネス書11冊の記事にまとめています。

中でも、仮説を立てて考える力の土台になったのが、この一冊です。

まとめ

この記事のポイント
  • 採用の流れ:情報系が最も強く、採用を拡大中。ADASとコネクテッドの採用が増え、電気電子系・機械系も強い
  • 専攻:私の職場の感覚では、技術系の8割は情報・電気電子・機械の出身。ただし残りの2割は、ほかの専攻から入っている
  • 面接:技術系の面接は技術系の社員が見る。技術系の面接官のポイントを押さえれば、通る可能性はぐっと上がる
  • AIのアピール:「AIを作りたい」より「AIを使ってこういうことができる」
  • 現場の課題:AIの評価の基準、ソフト中心の開発プロセス、OTA、ソフトの管理。ここに経験を持って切り込めると強い
  • 会社を知る:自分で仮説を立てる → AIでブラッシュアップ → 現場の方に質問する
  • リクルーターの目線:まずは自信と落ち着き。話し方は本番ではなく普段から磨く
  • 求める人物像:技術力より、コミュニケーション力と論理的思考力。社内に依存する調整はAIに任せにくいからこそ、関係者を集め、30分の会議で役割まで決めきるポータブルスキルが重宝される

技術の知識は、AIに聞ける時代になりました。だからこそ最後に問われるのは、人と向き合い、物事を前へ進める力です。面接は、その力を見せる最初の舞台なのだと思います。

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