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- 自動車メーカーから、コンサルや総合商社への転職を考えている
- それぞれの仕事の中身や年収の違いについて、全体像をつかみたい
- 自動車の経験が、どこで評価されるのかわからない
同じ「自動車の仕事」でも、身を置く場所が変われば、一日の景色はまるで違って見えます。
私は自動車メーカーで、AIを使った自動運転の開発に携わっています。転職活動では日立コンサルティングから内定をいただき、今はBig4のコンサルにも目を向け始めました。総合商社にも関心を持ち、いくつかの転職エージェントに紹介をお願いしています。
この記事では、自動車メーカー・コンサル・総合商社の3つの道を、実際に転職活動で動いている現役AIエンジニアの視点で比べ、最終的に、自動車の経験が評価されやすい道と、それぞれに向いている人、そして私自身の結論を提示します。
- 自動車メーカー:3つの中で、技術に最も深く関われる。安定して休みも取れる。年収は年次で上がり、30代前半で850万円ほど
- コンサル:Big4は自動車(スマートモビリティ)に力を入れ、PwCやデロイトなら自動車の仕事に就ける。同年代の年収は900万円台後半。転職するなら20代が有利
- 総合商社:自動車の事業は多く、同年代でも年収は高い。ただ、中途の採用は少なく、エージェント経由では門が狭い
- 私の今:いちばん有力なのは、自動車メーカーに残ること。そのうえで、外の選択肢としてBig4を見ている
なお、自動車メーカーは私が働く会社での実感、コンサルは選考と転職エージェントから伺った話、総合商社は転職エージェントとのやり取りと公開情報をもとにしています。会社や部署、時期によって事情は大きく変わるため、一人の体験に基づく比較として読んでいただければ幸いです。
自動車メーカー・コンサル・総合商社をひと目で比較
| 自動車メーカー(私の職場) | コンサル(日立コンサル・Big4) | 総合商社 | |
|---|---|---|---|
| 仕事の中身 | 多くの関係者と、クルマそのものを作る | お客様の課題を整理し、解決策の提案から実行まで支える | 自動車の販売や金融、物流などの事業に投資し、育てる |
| 技術との距離 | 最も近い。技術を自ら作り込み、クルマとして形にする | 技術を外から扱い、戦略や業務の変革に生かす | 技術を事業や投資の目で見る |
| 自動車との関わり | 当事者 | Big4のうちPwC、デロイト トーマツ、EYは、スマートモビリティに注力し、自動車に強い。国や大学の案件も | 三菱商事、丸紅、住友商事、豊田通商など、自動車の事業を持つ会社は多い |
| 20代後半の年収 | 約750万円(私・入社5年目、残業代込み) | 日立コンサルの提示は約850万円 | 25〜29歳の平均で約890万〜970万円(推定) |
| 30代前半の年収 | 約850万円(私の会社の目安) | Big4のシニアコンサルタントで900万円台後半(推定) | 30〜34歳の平均で約1,130万〜1,220万円(推定) |
| 働き方 | 部署で大きく異なる。有給は取りやすく、休日出勤は少ない | 日立コンサルは落ち着いて働ける印象。Big4ではPwCが最も整っていると伺った | 営業や事業開発から始まり、経営企画や投資へ進むのが一般的 |
| 中途採用 | ADAS(先進運転支援システム)やSDVの分野は採用が活発 | 選考は1か月ほど。30代はプロジェクトをリードする力を期待されるため、20代が有利 | エージェント経由の求人は少ない。専門性やマネジメント、海外経験が問われる。選考は2か月ほど |
自動車メーカー:クルマそのものを作る|技術に最も深く関われる
自動車メーカーの仕事は、社内のさまざまな部署やサプライヤーと手を携え、クルマそのものを作り上げることです。私は入社から4年間、1台のクルマの開発に、仕様決めから量産開始まで関わりました。その道のりは自動車開発の流れの記事に書いています。
良いところ:技術の深さと、形になる手応え
- 技術に最も深く関われる:3つの道の中で、技術そのものを自ら作り込めるのは自動車メーカーだけ。コンサルや商社は、技術を外から扱う立場になる
- 形になる手応え:自分が担当したクルマが、試作車になり、お客様のクルマになる
- 若手でも戦力になれる:ADASのような新しい分野は若手が多く、5年目でチームを引っ張ることもある
- 休みやすさ:有給は取りやすく、休日出勤はほとんどない。勤務地も、設計・開発なら基本的に固定
大変なところ:年収の伸び方
- 年収は年次で上がる:成果を出しても、急激には上がりにくい。私は入社5年目で、残業代込み約750万円。私の会社では、30代前半で850万円ほどが目安
- 忙しさは部署しだい:私のいるADASの部署は、会議も残業も多め。ただ、これは部署による差が大きく、業界全体ではむしろ残業は少ない方
私の部署の一日は自動車メーカーのAIエンジニアの1日に、合う人・合わない人は自動車メーカーに転職して後悔する人の特徴に書いています。
コンサル:日立コンサルとBig4|スマートモビリティへの注力が進む
コンサルの仕事は、お客様の課題を整理し、解決への道筋を示して、その実行まで伴走することです。私がコンサルを考えたのは、自動車メーカーの中に絡みついた「しがらみ」を、外から構造的に解きほどきたいと考えたからでした。
日立コンサルティング:落ち着いて働けるが、自動車の仕事に就けるとは限らない
日立コンサルティングからは、約850万円の条件で内定をいただきました。選考を通して感じたのは、コンサルの中では落ち着いて働ける環境であること、そして進行管理(PMO)のような仕事より、戦略の提案が多いということです。
ただし、入社しても、自動車の仕事に就けるとは限りません。面談では、自動車の案件は現時点ではないと伺いました。自動運転やSDVに関わりたい私にとって、希望と違う仕事をするリスクは小さくないと判断し、今回は見送りました。面接の中身は日立コンサルティングの面接の記事に、3社の選考は転職活動記②に書いています。
Big4は、自動車(スマートモビリティ)に注力している
そこで次に目を向けたのが、Big4と呼ばれる大手のコンサルです。転職エージェントから、Big4とベイカレントの話を聞きました。意外だったのは、Big4のうちPwC、デロイト トーマツ、EYの3社が、自動車、いわゆるスマートモビリティの領域に力を注ぎ、確かな強みを持っていることです。
Big4について伺った話を、私のメモからまとめます。
- 希望と違う仕事のリスクが小さい:PwCやデロイト トーマツは自動車の案件が豊富で、入社後に希望と違う仕事をするリスクはほとんどないと伺った
- お客様は国内が中心:国土交通省などの国の案件や、大学との産学連携のプロジェクトもある。日本のマーケットが中心なので、英語は必須ではない
- 専門人材の採用枠:特定のテーマに特化した人材のポジションも新設されている
- 転職するなら20代が有利:30代で入ると、シニアコンサルタントとしてプロジェクトをリードできる人材を期待される。現場経験を武器に、コンサルの基礎から身につけるなら20代のうちがよい
PwC:自動運転トラックで国の事業を担い、モビリティ戦略の部署も新設
中でも印象に残ったのが、PwCです。国土交通省による自動運転トラックの社会実装の補助事業では、PwCコンサルティングが事業者の公募や審査の運営を担っています(PwCの発表)。立場の異なる関係者を束ね、その中心で舵を取っているのがPwCだと伺いました。
2025年には、モビリティ戦略を専門とする部署も立ち上がりました。メンバーのほとんどが、自動車業界の出身だそうです。
自動車の案件では、国、メーカー、サプライヤー、大学と、利害の異なる人たちのあいだで話を進めます。「戦略づくりや動向調査には、リアリティが必要だ」という言葉も印象に残りました。机上の調査だけでは、現場で通用する提案にはなりません。開発の現場を知る人の経験が、ここで生きるのだと思います。
さらにPwCは、Big4の中で最もワークライフバランスが整っているそうです。社風も、穏やかで温和だと伺いました。
Big4の違い:転職エージェントから聞いた印象
| ファーム | 伺った印象 |
|---|---|
| PwC | 国の自動運転トラックの補助事業を運営。2025年にモビリティ戦略の部署を新設。ワークライフバランスが最も整っている。優しく、温和な社風 |
| デロイト トーマツ | 自動車に強い。社風は体育会系 |
| EY | 自動車に強い。社風は体育会系 |
デロイト トーマツとEYは、伺った印象だけでは違いが見えにくいので、公開されている情報から一般的な観点で補っておきます。
| 観点 | デロイト トーマツ | EY |
|---|---|---|
| 規模 | グローバルの人員は47万人超で、Big4の中でも最大級 | グローバルの人員は約40万人 |
| 得意な領域 | DX(デジタル変革)を軸にした、戦略から実行までの総合力 | 戦略とM&A。戦略部門のEYパルテノンが中心を担う |
| 自動車 | 自動車業界の専門組織を持ち、業界の調査や研究を継続的に発信している | 伺った範囲では自動車にも強い。公開情報では、デロイトほど目立った発信は見当たらなかった |
| 向いていそうな人 | 大きな組織で、業界に深く入り込んで変革を支えたい人 | 戦略やM&Aなど、経営判断に近い仕事に関わりたい人 |
Big4の年収:同年代のシニアコンサルタントで900万円台後半
Big4は、日本法人の平均年収を公表していません。口コミサイトの集計による推定値では、次のような水準です。
| ファーム | 平均年収(推定) |
|---|---|
| PwCコンサルティング | 約1,000万円 |
| デロイト トーマツ コンサルティング | 約960万円 |
| EYストラテジー・アンド・コンサルティング | 約910万円 |
ただし、これは全社員の平均で、年代も職位もまちまちです。同年代で比べるなら、30歳前後で就くことの多いシニアコンサルタントが目安になり、900万円台後半という調査があります。私の会社の30代前半の目安(約850万円)と比べると、100万円ほど高い水準です。
選考は、1か月ほどで進むことが多いそうです。
ベイカレントではなく、Big4を勧められた理由
私の周りにも、自動車メーカーからコンサルへ転じた友人が何人かいます。中でも多いのが、ベイカレントです。
転職エージェントによると、ベイカレントの案件は、戦略が3割、業務改革が5割、進行管理(PMO)が2割だそうです。ただ、ベイカレントに移った友人たちからは、PMO的な立場で雑務寄りの仕事を任されがちだという声も耳にしていました。
そこで、「PMOとして雑務を担う仕事はやりたくない」という思いを、転職エージェントに率直に伝えました。そのうえで勧められたのが、PwCをはじめとするBig4です。やりたくないことをはっきり言葉にすると、紹介される会社の顔ぶれも変わります。
もちろん、ベイカレントには独自の強みもあります。転職エージェントによると、ベイカレントは、国が根幹として掲げるような事業に積極的に参画しているそうです。特にAIや個人情報が絡む事業は、技術の流出やセキュリティの観点から、国として外資系のファームには任せにくい面があるといいます。日系のファームであることが、そのまま武器になっているわけです。
業績も好調で、近年は株価も大きく上がっています。2026年に入ってからも株価は上昇を続け、証券会社による目標株価の引き上げも相次いでいます(LIMOの記事)。
私自身がベイカレントの選考に進んだときの流れや、人事面談で伺ったワンプール制の実情は、ベイカレントの中途選考の記事にまとめています。
自動車メーカーからコンサルに移ると、年収や仕事、評価の軸はどう変わるのか。選考を通して見えたことは、自動車メーカーからコンサルへの転職で変わることにまとめています。
👉 自動車メーカーのAIエンジニアが年収を上げるキャリア戦略
👉 転職エージェントとスカウトサービスの使い分け
👉 どの転職エージェントを使うか迷ったら(実際に使った4社の正直な比較)
👉 職務経歴書の実物と、面接の答え・逆質問の準備シート(note)
👉 コンサル業界に特化した転職エージェント(AXIS Agent・無料)
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総合商社:自動車の事業は多いが、中途の門は狭い
総合商社の仕事:投資して、事業を育てる
総合商社は、単にモノの取引を仲介するだけの会社ではありません。今の主な仕事は、さまざまな事業に投資し、経営に深く関わりながら、その事業を育てていくことです。
自動車も、各社の主要な事業領域の一つです。たとえば三井物産は「モビリティ」を、丸紅は「エアロスペース・モビリティ」を事業の区分として掲げています。三菱商事、住友商事、豊田通商も、自動車の販売や金融、物流などの事業を持っています。
入社後は、営業や事業開発から始まり、経営企画や投資などの専門分野へ進むのが一般的なキャリアだとされています。
自動車メーカーと組んで、モビリティの新事業もつくる
商社は、自動車メーカーと手を組み、新しいモビリティの事業を生み出そうともしています。
- 三菱商事×日産:2024年3月、次世代のモビリティサービスと、EVを活用したエネルギー関連サービスの共同事業を検討する覚書を結んだ(三菱商事の発表)
- 三菱商事×日本TCS:2025年10月、SDVの開発支援サービスを見据え、モビリティ領域での戦略的パートナーシップに向けた覚書を結んだ
- 三菱商事×ティアフォー:自動運転の社会実装に向けて、自動運転ソフトウェアのティアフォーに出資している
メーカーが作ったクルマを売るだけでなく、クルマを起点にしたサービスやエネルギーの事業を組み立てる。自動車の開発経験が、こうした事業づくりで生きる余地は、十分にありそうです。
年収:29歳前後で比べても、高い水準
総合商社の平均年収は、2025年3月期の有価証券報告書によると、三菱商事が約2,033万円、住友商事が約1,744万円、丸紅が約1,709万円です。ただし、これは平均年齢が40代前半の数字です。そのまま比べると、差が実際以上に大きく映ってしまいます。
そこで、私と同じ29歳前後で比べてみます。
| 25〜29歳 | 30〜34歳 | |
|---|---|---|
| 三菱商事 | 約968万円 | 約1,221万円 |
| 住友商事 | 約885万円 | 約1,128万円 |
| 自動車メーカー(私の会社) | 約750万円(私・入社5年目、残業代込み) | 約850万円(目安) |
29歳前後で比べると、差は130万〜220万円ほど。全社平均ほどの開きはありません。ただ、30代前半になると、自動車メーカーの約850万円に対して1,100万円を超え、差は280万〜370万円ほどに広がります。歳月を重ねるほど、その差は開いていくのです。
エージェントに紹介を頼んでも「扱っていない」
ただ、中途の門は狭いと感じました。いくつかの転職エージェントに総合商社の紹介をお願いしたものの、返ってきたのは「その会社の採用は扱っていない」という答えでした。
コンサルのように、常に中途の採用を積極的に行っているわけではなさそうです。中途採用では、これまでの専門性に加えて、マネジメントや海外での経験が問われるとされています。選考にかかる期間も、コンサルの1か月ほどに対して、総合商社は2か月ほどだと伺いました。
豊田通商を見送った理由
自動車に関わる総合商社といえば、豊田通商も思い浮かびます。ただ、トヨタグループのお膝元という印象が強く、事業の幅が限られていそうだと感じたため、今回は候補から外しました。あくまで私の印象で、実際の事業の幅を確かめたわけではありません。
どんな人に、どの道が向いているか
| 道 | 向いていそうな人(私の考え) |
|---|---|
| 自動車メーカー | ものづくりの実感を大切にしたい人。安定と休みやすさを重視し、多くの関係者と一つのものを作り上げたい人 |
| コンサル | 業界の外から、課題の構造そのものを変えたい人。仮説を立てて考えることが好きで、20代のうちに自動車の現場経験を武器にしたい人 |
| 総合商社 | 事業に投資し、育てる側に回りたい人。メーカーと組んでモビリティの新事業をつくりたい人。求人が出たときにすぐ動けるよう、長い目で準備できる人 |
外の世界で自動車の経験が評価されやすいのは、スマートモビリティに力を注ぐBig4だと感じています。ただ、技術に最も深く関われること、そして同年代で比べれば年収の差が思ったほど大きくないことを考え合わせると、今の私にとっていちばん有力なのは、自動車メーカーに残る道です。そのうえで、外の選択肢としてBig4を見据えていくつもりです。
まとめ
- 自動車メーカー:技術に最も深く関われる。年収は年次で上がり、20代後半で約750万円、30代前半で約850万円が目安
- コンサル:Big4のうちPwC、デロイト トーマツ、EYは自動車に強く、PwCやデロイトなら自動車の仕事に就ける。同年代のシニアコンサルタントで900万円台後半。転職するなら20代が有利
- ベイカレント:国の根幹事業に強く、AIや個人情報が絡む案件で日系ファームの強みを持つ。業績と株価も好調
- 総合商社:三菱商事は日産とモビリティの新事業を検討。同年代でも年収は高いが、中途の求人は少なく、選考は2か月ほど
- 私の結論:いちばん有力なのは自動車メーカーに残ること。外の選択肢としてBig4を見ていく
どの道にも、光と影があります。大切なのは、自分が何を求めているのかを見定めたうえで、一度は外の世界をのぞいてみることだと思います。

